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逆カルチャーショック、食べ物編
２004年、秋。私は今、日本で毎日普通に生活している。特別ではないけれど1日1日を着々と消化して1年が経った。渡米していた3年間など、まるで無かったかのように時間が繋がっている。そんな当たり前の生活に戻ったのだ。でも時々感じる「あれっ？」というギャップ。そのたびに思い出すアメリカ流のやり方。ここではどちらが良いとか悪いとかを語りたい訳ではなく、所変われば“現地なりの普通、現地なりの常識”があると言いたいだけ。それが私の逆カルチャーショック。 なつかしや、カリフォルニア米 「アメリカに行くことになった」と言うと、英語のことはもちろんながら、食べ物のことで心配される事も多かった。私自身、アメリカンフードの印象がマクドナルドだったので、アメリカでも日本食が食べられるか、ある程度の心配はしていた。すでに生活をしていた諸先輩方からは「何でも手に入る（高いけど）」と言われていたけれど、百聞は一見にしかずで、実際に自分で見てみないことには分からなかった。幸い私の生活圏にはいわゆる日本食料品店が数軒あったので、賞味期限が間近で特売になった商品以外は、言葉通り（高いけど）何でも手に入った。 しかし。お米だけは別なのだ。お米は日本人の主食なので、無くてはならない食材である。こればっかりは代用が利かないので、多少の出費は否めないと覚悟をしていたのに、なんと日本よりもず〜っと安かったのだ。理由は簡単で、売られているのが日本からの輸入品ではなく、アメリカ国産のカリフォルニア米だからなのだが。それにしてもこれには驚いた。ブランドも豊富だし、日本と同じようにその年の新米が買えるし、最高品種は味も日本のお米に勝るとも劣らない。しかし値段は半額以下である。我が家のエンゲル係数におけるお米が占める割合がグッと下がったのは言うまでも無い。 で、帰国後。5kg入りの新米コシヒカリが2500円なんて普通。産地にこだわれば3000円以上も当たり前。う・・・高い。カリフォルニア米のコシヒカリ品種は半額以下だったのに・・・。もともと日本で生活していたくせに、帰ってみたらこの値段の開きが私にはかなりの打撃に思えた。日本でもカリフォルニア米を輸入したら良いのにと、勝手な願いまで湧いてきた。でも仮に現在の米の輸入関税の490%が引き下げられたら日本の米農家にとっては死活問題だから、実現は不可能だろうけど。それにしても490%の関税って、べらぼうに高い！ 食べ物つながりで、お肉の話 かねてから噂を耳にしていた通り、確かにアメリカは肉が安かった。最初は牛肉の安さが感動的に思えて、ヒレのステーキやカルビを良く食べた。ヒレは脂肪が少ないのでアメリカでも高級な類だったけれど、カルビは脂が乗っている分とても安かったのだ。帰国して日本の国産牛の価格には軽くショックを受けたし、家計の為にともっぱらオージービーフを買うようになってしまった。 鶏肉もターキーも安かった。しかし鶏肉は黄色に着色されていたり、消毒薬の味がしたり、怪しい脂肪がぶりぶり付いていたりと疑わしい物もあったけれど。オーガニックスーパーの鶏肉が割高でも、気分的に安心で美味しかったと思う。意外にも豚肉は需要が低いのか思ったほど手頃感は無く、使い勝手の良い薄さにスライスされたものが無かった。薄切りと書かれた肉でも、薄さが1cmなんていうのもあったっけ。個人的にはスペアリブ用のブロックを大きなオーブンで焼いたのが見栄えがする割に簡単で好きだった。・・・と、肉の思い出はここまでで。 私が帰国してから間もなく、アメリカからの輸入牛肉が日本から消えた。理由は、言わずと知れたBSE（狂牛病）問題である。とうとう、アメリカでも狂牛病に感染している牛が出たのだ。・・・って、何を今更騒いでいるのだ？という風に冷めて感じた私。もしかしたらこれも、逆カルチャーショックなのかもしれない。狂牛病に対して深刻視していないだとか、検査や管理がずさんだと突っ込んだところで、アメリカはそういう所なのだと、最初から妙に諦めている所がある。 日本が輸入を停止して大騒ぎになっていた頃、アメリカのメディアでもBSE感染牛がいたと報じられていた“はず”である。しかし狂牛病なんてどこ吹く風と、アメリカ人はハンバーガーを食べていたようだ。ローカーボ（低炭水化物）ダイエットでバンズ無しのバーガーが有っても、ビーフのパティ無しのバーガーなんて無いし・・・。 そう、私が在米中に食した牛肉はほぼ100％国産、つまりアメリカ産であった。ということは、私は狂牛病陽性であるリスクが日本の牛肉を食べていた人よりも高いのだ。もう食べてしまった物はどうにもならない。後は私の脳がスポンジ状にならない事を祈るしかないのだ。骨ごと煮込んだスープなんて、危険なエキスがたっぷり詰まってたんだろうなぁ・・・はあ。