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英語で日常生活記録

 心にいつも達成感を 

回は、miyamuという「駐在員の妻」がアメリカにやって来た当初の頃を少し思い出してみたい。私は「駐在員の妻」をはじめ、「○○さんの奥さん」「○○ちゃんのママ」などという肩書が好きではない。とても子どもじみた考えかもしれないが、「私は私、いつだってmiyamuという人間なのだから」と思っていたいのである。でも今回は、あえて「駐在員の妻」と言ってみることにしようと思う。

生時代、会社員時代、私は誰からみても「miyamu」という存在でいられた。それが、結婚をし知り合いもほとんどいないアメリカに来てみれば、誰も私が「miyamu」である事など知る術もなく、私は「駐在員の妻」の「○○さんの奥さん」になってしまった。もしかしたら、女性は妻になり、母になり、家庭に入ってしまった時に、少なからず「最近、自分の名前で呼ばれないなぁ」と感じるのかもしれないけれど・・・。

メリカの社会は、妻だろうが母だろうが一人ひとりが独立している。ただそんな環境にいても、私はアメリカの社会には参加していなかった。それもそのはず、渡米してから数ヶ月もの間、私は普段はほとんど家にいて、行動範囲は近所のスーパーだけ。それでは人と知り合うチャンスもない。夫以外の人間とは会話もほとんどできないのだ。

の頃に感じた閉塞感や焦燥感、ひねくれていじけた気持ちは、「自分がどこにも存在していないような」寂しさから来ていたように思う。ある時、意を決して学校に通うまでに、私は自分の中にあったそういう嫌な部分をたくさん見つけた。見つける度に、「こんなのダメだ」とため息をついていた。



ラリーマンの夫は、「任務」を担って海外赴任する。責任感とプレッシャーを抱き、気を引き締めて新境地へ挑む。そこには困難も多いけれど、仲間が出来る。目標がある。やり甲斐がある。家族のために頑張っているという手応えがある。そして少なくとも、彼は社会に「存在」している。

どもは本人の意志と関係なく連れて来られてしまうので、心の負担は大きいだろうと思う。初めは新しい環境に馴染めずに悩んだり、学校を嫌がったりするかもしれない。でも、柔軟な適応力でいつの間にか社会に馴染み、友達も出来て、家族で1番達者に英語を操り、頼もしいことに母の言い間違いを指摘するようになってゆく。

て、「駐在員の妻」はどうだろう。きらびやかなイメージがつきまといがちなこの肩書きは、「待ってました!」と海外暮らしを楽しめる人には願ってもない転身だ。でも、皮肉っぽく臆病な私のようなタイプには違和感があり、窮屈だった。夫の仕事の都合で仕事を辞め、知らない土地へ引越し、言葉の不自由さの中で生活し、家事をこなす。家を守るのがお役目で、いずれは子育てをして、趣味を見つけて、送迎以外は時間を持て余しお気楽なのか…きっと、そうではない。



在員の妻は、自分で何もしなければ、何もしないでいられる。仕事を持たず(帯同家族が就労するのが困難という問題もあり)、子どもと違って学校もない。もちろん家庭にとって必要な存在ではあるが、海外生活に馴染んだ家族といると、自分だけ何故か取り残された感覚に見舞われる。たまに、自問自答するのだ。「幸せなのに、何かが足りない気がする…」

庭だけが「社会」になってしまうと、自分が何をしたらよいのか分からない状態は一日ごとに辛い。私自身は、手持ち無沙汰の状態で長い時間を過ごすのは歯がゆく、焦りや苛立ちを感じるのに臆病になり、ストレスが膨らんでいくのを感じた。この情けない孤独感は、華やかな「駐在員の妻」のイメージに遠く及ばない。

外暮らしのブルーな時代に、私は自分が何を求めているのかを考えた。じっくりゆっくり考えていると、何が自分を元気づけたり、勇気をくれるのかが分かったような気がした。行きついた結論はひとつ。小さくても達成感、自分が何かを成し遂げたときの充実感がほしい、それだけだった。

さな達成感は、いたる所にある。どんなに些細でも、出来た時は嬉しいものだった。アメリカで運転免許を取った、初めての店を開拓した、一人で電車に乗った、裏道を見つけた、郵便局に荷物を出した、図書館の会員になった、学校に通った、現地の医者にかかった痛みすら、成し遂げた後はいつだって思った。「やれば出来るじゃん!」「意外とあっけなかったじゃん!」「ほら、大丈夫だったでしょ?」と。



の呼び方、駐在員の妻。それがどうした、駐在員の妻。まるで駐在員が主役で、妻はおまけであるかのような、駐在員の妻。たとえそれが事実であっても、生きている主役は自分自身、一人ひとりのものだ。だから、「私は夫について来ただけの駐在員の妻」と、ネガティブに思うことはやめた。妻は妻、母は母、同時に私は私、あなたはあなた。何役もこなす一人の女性として、生きている。








 
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