その日の朝、私はいつものように忙しかった。目覚ましが鳴ってもギリギリまで眠って、のろのろと起きあがり、朝食を作り、食べて、片付けて、夫は仕事へ、私は着替えて、学校へ行く･･･その間約1時間半。いつもどおりの忙しい朝であった。授業が始まる9時を少し過ぎて、教室に着いた。

机の上にノートと教科書を出した時、ハッと気付いた。「辞書が無いっ！」

さらに言うとペンケースも無かったのだが、それより何よりも辞書無しで授業を受けることは私にとって不安だった。私が授業中に使用している辞書は、渡米前に日本で購入してきた電子辞書だ。引っ越してきてはじめの頃は、言葉の不安も多く、何処へ行くにもこの電子辞書を持って行った。頼もしい使えるやつだ。それが、バッグの何処にも入っていなかった。

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私が授業中に辞書を使う回数は、他の学生と比べ物にならないくらい多い。その日の授業の内容にも寄るが、大抵は先生の言ったことや教科書の単語などに、分からない事が混ざってあるからだ。こうなると、電子辞書は大活躍する。

普通の辞書では一つの意味を調べるのにも時間が掛かって、会話や授業に取り残されてしまいかねない。それが電子辞書ならばボタン入力なので早く単語の意味が調べられる。私の場合、英和の他に和英の使用頻度も高いので、電子辞書がありがたいのだ。以前、英和と和英が一緒になった小さな辞書を使っていたが、それは単語も文例も少なくてあまり使えなかったからだ。

いつもあるものが手元に無い。私は教室で1人、とても落ち着かない気持ちになった。辞書があると、分からない事があってもなんとかなる･･･という安心感が大きかったのだ。普段はそれに慣れて、甘えていたのかもしれない。でも現実に、私はまだ辞書無しでやってゆける状態じゃないし、困ったな･･･。

午後の授業もあるし、このまま辞書無しで1日過ごすべきなのか、それとも家に取りに帰るかで悩んでいる間に授業が進む。教室内のあらゆる音を、上の空で聞いていた。私の家は学校から急いで20分程度である。昼休みに急げば取りに帰れるはず･･･。

しかし、より辞書を必要とする授業は午前の方だったし、昼に道が混んでいたら昼食をとる時間も無い。「･･･たまには、私も苦労してみようか？」と、大胆な考えが浮かんだ。その日は落ち着かないながらもそのまま授業を受けてみようと思い直したのだ。愚かなmiyamu、もちろんそれが間違いだったのだが。

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Ｇrammarの授業でReading（長文読解）をする時は、いつも突然であった。それなのに、私が辞書を忘れた日に限って、どうしてやるかね？この本を･･･。もしReadingをするならば、頻繁に辞書を使うことになる。知らない単語が多く出てくる教科書だったし、そのトピックに関してディスカッションをする時間があったからだ。自分の言いたい言葉を十分に表現するには、今手持ちの語彙では到底足りない。

４人のグループになって「ピラミッドの発掘」というトピックを読んだ。幸い、難しい単語は少なめだったので助かった。グループになると、分からない単語を「○○ってどういう意味？」と仲間に口頭で聞くことが出来るのでよかった。Readingの時は、クラスメイト達はみんなで協力して、お互いの分からない単語を説明しあうのだ。先生もその練習は良いことだと言っていた。

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午後の授業なり、私の苦難がやってきた。まさかConversationの授業で、予告もなしに作文を書くことになるとは思ってもいなかったのだが、授業の後半に「特別な日」というテーマで作文を書くことになってしまった。「辞書忘れたのに〜」と、横に座っていたクラスメイトに愚痴ってみた。「そりゃ大変だね、私も辞書無しじゃやってられないよ」と言われ、励まされた（？）みたいな気分になった。

子供の日について、書く事にした。日本では5月5日は子供の日で、どんな日で、人々は何をして、何を食べ、何を飾るのか、そのような事をいくつかの章に分けて書いた。しかし、使っている単語は簡単なものばかり。途中で「セレブレイト（celebrate）ってどう書くの？」とか、隣の人に聞いてみたりして助けてもらった。（私はＬとＲのスペルを混乱するのだ。）

私は「鯉のぼり」について、こう表現した。「Koinoboriは大きな魚型の旗で、風で空を泳いでいるみたいに見える。」く･･･苦しい。旗じゃないのに･･･。そして「兜飾り」については、「Kabutoは戦国武将が頭にかぶっていたもので、強い男の子のシンボル。」だなんて思いつくままに書いてしまった。オイオイ本当か〜？私のせいで日本の文化が誤解されたしまったらゴメンナサイ･･･。

※鯉のぼりは「A carp streamer」みたいです。