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コミカレESL潜入記


発音矯正塾その2

音矯正塾だなんて勝手に名づけてしまったのには訳がある。

際にこの授業に参加するまでは、Speach Communicationという講座名なのだから、「話したり、コミュニケーションを取りあう、度胸をつける為の講座」なのかと思っていた。しかしそれは大きな間違いだった。本当は、「話したり、コミュニケーションを取る為に必要な、発声法とリズム(語感)を学ぶ講座」だったのだ。だから、授業内容は会話の練習などはまるっきり無くて、まさに発音の矯正そのものだった。

peach Communicationを担当する先生は、その道○十年というベテラン発音矯正講師で、私たちは先生が作ったオリジナルテキストを用いて授業を受けた。それに加えて家で何度も復習できるようにと、先生による手作りの練習用のカセットテープまであるのだ。このカセットはテキストの内容に忠実に出来ているので、自宅で授業に参加しているような体験ができるようになっていた。ただ1つ難点を挙げるとすれば、毎回先生からカセットを買わなければならないことだ(5ドル也)。



業は、英語の発音法が他の言語とどう違うかという話から始まった。

語は他の言語よりもハッキリとした発音の強弱と抑揚が命であり、それだけでも正しく身に付ければ、誰しも英語がずっと伝わりやすくなるという。発声の基本は、それまで使っていなかった口と顔の筋肉を鍛えて、もっと呼吸にエネルギーを使うようにする事らしい。確かに、日本語は口先だけ動かせば何でも言えるし、頬の筋肉など、あまり活用した経験が無い。演劇部の発声練習のように、ハキハキとした口の動きが無くても会話ができるからだ。



生の提唱する練習法は、「発音の練習は発声から。それを何度も反復する」という事だった。テキストの中で、人間の発声のしくみを体の構造から分析した解説図があった。先生が説明をした。「英語はあなたの母国語とはまったく違う部分を使います。特に口の内部の構造と動きに注意して、舌と、歯と、上あごと、唇、横隔膜、肺、腹筋を使います。」

「息を深く吸い込んで・・・ハイ止めて。今、肺に空気が入ったので横隔膜が下に下がりました。ハイ次に息を吐いて。今度は腹筋が横隔膜を押し上げて、元の状態に戻したわけです。筋肉は1つの方向にしか動きませんので、深呼吸にはいくつかの筋肉が作用しているのです。では、もう1度息を吸い込んで・・・」先生は息を吸い込み、そしておなかの上に手を乗せて「ハッッハッッハッッハッ!」と続けて小刻みに強く息を吐いた。

の後で、先生は教室の学生を全員起立させて、一人一人に同じ事をするようにと促した。さすがにみんな恥ずかしそうにしている。すると先生は「恥ずかしがらないで!」と言って、繰り返しこの腹式呼吸の練習をした。教室中からハッハッハッと聞こえ始めたので、私はここは出産の呼吸法練習会なのか?とちょっと思った・・・。実はこれがHの子音の練習だった。



ずは最初の呼吸方法を習得してからは、子音と母音を1つ1つ、口の形から総復習が始まった。それを踏まえて、発数々の発音しにくい単語を練習してゆき、それが複合語から句になって、さらに少しずつ一度に読む量が増えてゆき最後に文章になった。正しい発音をするようにと心がけつつ、なおかつ文章が長くなると、体に染み付いた間違いがとっさに出てしまう。「th」を「s」と発音したり、「l」と「r」がごちゃ混ぜになったり・・・。そのたびに先生にやり直しをさせられた。

の授業を通じて本当に為になったと思うのは、スペルと発音には規則性があって、決まった子音と母音の組み合わせによって読み方も定まる事や、語尾の形と音節の数によってアクセントの場所が変わるという話などである。英語って突き詰めるとけっこうおもしろいかもしれない。

れぞれの発音毎に、色々なルールがあることを意識したのは初めてのことだった。例えば「t」の子音は、上の歯の後ろに近い上顎に舌をつけて、突き放すように「t」と発音する。この時に声を出さない事が大事で、声を出すと無声音の「t」から有声音の「d」に変わってしまう。こんな当たり前の発見も、とても新鮮に感じた。毎回の授業が全子音と母音の復習から始まって、同様の暗唱で終わった。これぞまさに反復学習、といった感じだ。



の発音には出身国じたいのなまりやクセがあり、発音しやすい音としにくい音がある。日本人にはLとRが難しいように、他の国の出身者には他の問題があるようだった。先生はその違いを熟知しているのか、同じ場所をいつもなかなか上手く発音できない学生を、マンツーマン状態で何度も繰り返し発声させた。それはとてもほほえましいムードではなく、スパルタ教育を受けているような厳しい雰囲気であった。でも、ひとたび上手く音が出た時には、先生はその人を誉めて励ましてくれるので、初めは反発していた人たちも、先生がただ厳しいだけの人ではないのだと分かったようだ。

み時間になると、先生は学生達のクセを修正すべく、個人的に学生の近くに行っては話を聞いてくれた。ある日、私にもLとRの音の違いを何度も教えてくれた。この時の先生は教室内にいるときの厳しさが無く、笑顔がとても優しかった。私は授業の最後の2回を帰国によって欠席する事になっていたので、その補充の為にも休憩時間には熱心に正しい発音方法を教えてくれた。

が出席できる最後の日に、先生にお礼とお別れの言葉を伝えた。そうしたら、先生は「あと2回は大事な部分だから、次の学期の私の授業に後半からいらっしゃい。申込みや学費はもう必要ないし、これは私があなたを招待しているのだから、気兼ねしないで来てちょうだい。」と私に言った。私はこの申し出にとても感謝して、次の授業にも絶対行きますと答えた。感情豊かな先生が、別れ際にくれた抱擁はきつくて、私まで感激してしまった。





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