意味が混乱しやすい単語の1つに、freeがある。
Free Sample
街頭で、「フリーサンプルで〜す」と言われれば、タダより安いものはないとばかりにゾロゾロと人が集まってくる。そう、freeはタダだから!この場合のfreeは、無料のという意味である。無料=ご自由にというニュアンスがある。
日本でfreeといえば、この「ご自由に」という意味で使われることが多く、フリーというカタカナ英語の氾濫はものすごい。フリーと聞けば自由なのだ、無料なのだと勘違いしてしまいかねないような使われ具合をしている。時々私はフリーというカタカナ英語のもたらす悲劇を想像してしまうのだ。
Fat Free
アメリカで売られている食品の多くに表示されている○○freeの文字。以前、亜米利加的栄養学でも書いた、fat
freeという言葉はその典型だ。この意味は前出のfree
sampleとは異なる。カタカナ英語の解釈だと、ファットがタダなの?脂肪が自由なの?まさか、脂肪がフリーにいっぱい入っているって事!?・・・と意味不明になってしまいそうだが、間違えてはいけない。
Fat freeのfreeは、無料だとか自由という意味ではなく、「○○の無い」という意味なのだ。○○から解放されたとか、○○の束縛の無いというような意味合いだ。意地でもfreeを自由という意味で通そうとするのなら、fat
freeを「fatから自由になれる」のだと解釈しても通じる。
アメリカの食べ物にはSugar free(砂糖抜き)とか、Cholesterol
free(コレステロールなし)という表示が非常に多いが、食べ物以外の様々な場面にも、○○freeという使われ方は思いのほか日常に溢れている。
Smoke free =No smoking、nonsmoking
つまり禁煙の事なのだが、悲しきかなカタカナ英語の威力。空港やオフィスビルなど、このサインが見受けられる辺りでは「お、煙草吸ってもいいのか」とおもむろに煙草を取り出し、火を点けてしまう人がいる。このfreeは、noやnonと一緒で、禁止の意味になるのだ。
Gun free
当たり前。武器の所持禁止という意味。
Pain free
痛みの無い治療など、このように言うことがある。
Commercial free
コマーシャル(CM)抜きの、ラジオ番組などでよく言われる。
Tax free
課税されないということ。
ここでfreeをnonと置き換えてみると、無脂肪乳に書かれていたfat
freeとかnon-fatなどの表示にも納得が行く。
「○○フリー」というfreeの使い方は、実は日本でもされている。それに近年よく聞かれる「バリアフリー」という言葉は、barrier
freeで柵や障害が無いという意味になる。英語のようだが和製英語である。アメリカでは体に何らかの障害のある人も社会に溶け込んでいるし、さらに建物の作り自体がバリアフリーというのが基本なので、改めて言う必要の無い言葉なのだろう。
同様に「ジェンダーフリー」gender freeというのも、和製英語である。日本の社会でも、職場などでの性差別について啓発しようという動きが新しい言葉を生んだのではないだろうか。
さらに、「リンクフリー」。よくネット上で見かける「このサイトはリンクフリーです」という文字。これだけは、使い方を間違えていると思う。link
freeはリンクしない、リンクなし(=禁止)という意味である。ご自由にというならば、free
linkである。意味が逆になっている。和製英語は難しいのだ。
私はfreeの単純な目印として、freeが名詞の前に付いている場合は、形容詞としての「自由な〜〜」とか「無料の〜〜」という意味に捉えておけばよいと思っている。その逆に、freeが後に付いている場合は「〜〜のない」とか「〜〜禁止」という意味に解釈している。
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