「May I try this on ?」
アメリカ人と日本人とは体形が違うので、現地で洋服を選ぶ時はいろいろと問題がある。基本的にアメリカで売られている洋服のサイズは大きい。袖や裾が長すぎだったり、胸元がダブダブだったり、ズボンからつま先もでなかったり・・・それはもう、ちょっと悲しいほど。買い物の失敗を避けるためにも、やはり試着することは大切なのだ。
洋品店で気に入った洋服を試着したい時に、近くの店員さんに声をかけるのは日本でもアメリカでも共通している。大抵の店で、お客は試着したいと告げてから、試着室に誘導してもらう。時々、店によっては試着室の前に専属の店員がいることがある。これは万引きを防止したり、空室を効率的に裁くためのポジションなのだと思う。さらに、複数の商品を持ち込むときには、その商品数に合った番号札を渡される店もある。
ここで登場するのが決まり文句の「May I try this
(または it )on ?」である。こう言えば、店員さんは「Sure.」と言って、どうぞどうぞと試着室へ連れて行ってくれる。
May I 〜から始まるフレーズはとても便利だ。何かの許可を得たい時や、お願いをしたい時などにいくらでも応用ができる。CanもMayと同様な意味で使えるが、Mayの方が丁寧な言葉遣いなので、私はMayと使う事が多い。会話の相手が私に対して抱く印象が、「きちんとしている」という方が思うのは日本で敬語を使うのと同じだと思う。
さて、いつでもどこでも「May I try this on ?」で試着をし続けていた私は、英語を習いしばらくして、自分の間違いに気がついた。
英語と日本語の違いの1つに、名詞の単数形と複数系の変化がある。例えば、日本語では1冊でも2冊でも本は本だが、英語の場合は1冊ならbook、2冊ならbooksになるのだ。こうして文章にするととてもシンプルで簡単な事だけれど、会話の場面では意外と間違える。
試着室の前で、私の手にはセーターが2着。私は店員さんに「May
I try this on ?」と言った。もちろん意味は通じるし、店員さんは快くどうぞと言ってくれる。でもこの場合、本当は「May
I try these on ?」と言わなければ間違っている。さらにジーパンを試着する時、私は店員さんに「May
I try this on ?」と言った。でも、これも本当は「May
I try these on ?」と言うのが正しい。
セーターは2着なのだから分かる。でも、ジーンズは1着なのに、どうして複数形を用いるのだろう。気になったので、あるとき私は英語の先生に質問した。すると先生は「右足と左足が二つに分かれているからよ。miyamuもフット(foot)とフィート(feet)と使い分けるでしょう?」と言われた。
私がそれでもなんとなく納得できずにいると「シューズ(shoe+s)もソックス(sock+s)も、普段は複数でしか使わないでしょう?」と念を押された。靴も靴下も一組なのだから複数なのは分かる。でもジーンズはつながっているのに。英語は変だ。ジーンズが右足と左足でペアだと言うのなら、セーターだって右手と左手があるのに、なんて屁理屈をごねた。
こだわるとしつこい私は、それからもそのことを不思議に思っていた。英語ではどうやらペアという概念があるものに、複数形を用いるようだった。他にも眼鏡はglassesで、手袋はglovesで、このように複数形を用いるものは多かった。ここでも手袋は分かるけれど、眼鏡なんて1つのものなのに・・・と思った。
ある日私は、先生に再び質問した。「女性用のビキニ(bikini)は、複数形で使うべきでしょうか?」私は、ビキニは上下で別れているのだし、ペアで使うものだから複数なのかと疑問に思ったのだ。でも先生の答えは「ビキニはビキニ、単数よ」と、そっけないものだった。ほんと、英語って不思議だ。
上半身に着る洋服とスカート(skirt)を1着試着したい時は
「May I try this on ?」で
2着以上の洋服や、1着でも右足と左足が分かれたもの(ズボン・靴など)を試着したい時は
「May I try these on ?」・・・って、紛らわしいっつーの!
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