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 映画を英語で。

 Monster's Ball (チョコレート)

「Monster's Ball」を観た。2002年の第74回アカデミー賞で、主演のハリー・ベリーが有色人種としては初となる主演女優賞を受賞した作品である。授賞式での彼女のスピーチは深い感激で言葉が見つからないかのように始まったが、アカデミー賞の歴史で黒人女性が主演女優賞という大きな栄誉を得られたという感動と喜びを熱く語った。このスピーチを見たときから、私は「Monster's Ball」というのはどんな映画なのかずっと興味があったのだ。


この映画の邦題は原題の「Monster's Ball」とガラッと印象の違う「チョコレート」というものだから、思わず恋愛映画かな?と想像してしまいそうになる。しかしながら、実際は全然違っていた。ストーリーでは異人種間の恋愛を扱っているけれど、恋愛といっても甘い内容ではなく、かなりシリアスなドラマなのだ。感想や内容をサラッと書くにはテーマが重たく、ずっしりしすぎていた。

人種差別惹かれあうしているこの映画での受賞だし、彼女にとっても、映画界にとってもきっと大きな意味があったのだろう。
 



台はアメリカ南部、いまだに黒人に対する人種差別や貧富の差が根強く残っているような地域である。刑務所の死刑囚棟に勤めているハンクとソニー親子。ハンクは自分の家の敷地に入り込んだソニーの知り合いの黒人の子供達に銃を向けるような激しい人種差別主義者である。ハンクの父親もかつては同じ職についていた根っからの人種差別主義者なのだが、この一家の中で息子のソニーだけは心優しい青年で、自分の祖父や父親の偏見に満ちた考え方に対して疑問を抱きつつ静かに生きている。

人の死刑囚のローレンスに死刑が執行される日、ローレンスを電気椅子に連れて行く役をしていたソニーはその酷さに耐えられず、職務中に取り乱す。ハンクはこの事でソニーを激しく罵り、2人は決裂する。「僕を憎んでいるんだろう?」と聞いたソニーに「ああ、憎んでいるさ」とハンクは言う。しかし、「僕はお父さんを愛しているのに」という言葉を残して、そして和解も出来ないままに、ソニーはハンクの目の前で自殺してしまうのだ。この事件をきっかけとして、ハンクの中で変化が起こり始める。

方、ローレンスの未亡人であるレティシアは、極度の肥満児である息子と2人で貧しい暮らしをしている。父親がいないことで心を病んでいるのか、息子はキャンディ・バーを止められないのだ。そんな息子を愛しているのに、夫を失ったことと貧困とで心に余裕が無く、ついヒステリックで暴力的になってしまうレティシア・・・。

んなある日、交通事故に遭ったレティシアの息子を病院に運んだことによってハンクとレティシアが接近する。「あとは警察にまかせよう」というハンクに、レティシアは淡々と「黒人の子供が死んだところで、警察は動いてくれるかしら」と、差別的なアメリカ南部の社会で真実を突いている事を言う。この事故で結局息子までも失い、レティシアは一人ぼっちになる。以前は黒人の言う事になど耳を貸さないような人間だったハンクなのだが、次第に貧しい彼女の手助けをするようになってゆく。ソニーを失った喪失感を埋めるようにレティシアに近づくにつれて、ハンクの中にあった黒人差別の意識が薄れてゆくのだった。同様に夫と息子を失ったレティシアの中にも徐々にハンクが入り込んでゆく。実は夫の死刑を執行した人物である事も知らずに・・・。

の書いたあらすじでは本当にうわべだけの薄っぺらになりそうなのだが、これはよく出来た人間ドラマで、心の中にある深い葛藤と共に、どこかに救いや拠り所を求めてゆく気持ちなどが言葉の一つ一つや表情で見事に表現されていると思う。とてもシンプルで静かな流れで、心理描写がじっくり描かれている。登場人物が極端に少ない映画ながら、ハンクを演じるビリー・ボブ・ソーントンとレティシアを演じるハリー・ベリーが非常に上手い。

Monster's Ball

ころで私は原題の“Monster's Ball”の“Ball”を、最初は投げるボールだと勘違いしていたのだが、これは舞踏会(楽しい宴)を意味する方のボールだった。社交ダンスで踊る場所をボール・ルームという、そのボールである。

刑が執行される前夜に、死刑囚は1番食べたい物をリクエストする事が出来る。この最後の晩餐こそ“Monster's Ball”で、死んでゆく死刑囚に施される最後の宴なのだ。映画の中でもローレンスのために彼の好物ばかりをのせた御馳走がやって来る。とても切ない。ハンクがソニーに“Monster's Ball”について「In England, they give the man a party the night before. (多分、こんな内容のセリフ)」と説明するのだ。ちなみに邦題の「チョコレート」とは、映画の中で黒人の肌の色を象徴したかのようにチョコレートアイスクリームが数回登場することにちなんでいるのかと思う。

本で公開されたときには成人指定されたというだけあって、映画の中では殺伐とした刑務所でのシーンや過激な性描写などが登場する。例えば、思わず目を背けたくなるような死刑執行のシーン。本物の刑務所内で撮影されたという電気椅子からは、その臭いさえ感じられそうな気がして、ソニーじゃなくても吐き気がしそうになる。しかしこの死刑執行のシーンをぼかすことなく有りのままの映像にしてしまうことで、観ている側にもその残酷さや、救いの無い悲しさや、ソニーが自殺してしまったことや、レティシアが夫を失ってしまったという重たい現実もグッとリアルに伝わってくるのだ。



From Day by Day Sep 6,2003
 





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